La_<2-x>Ba_xCuO_4系銅酸化物超伝導体では、x=1/8の近傍で超伝導が著しく抑制される。これまで、この超伝導の抑制は酸素八面体の傾きによって起こる低温(T_1〜60K)での構造相転移がフェルミ準位の状態密度を減少させるためと考えられてきた。しかし、最近、Ndを添加したLa_<2-x>Sr_xCuO_4(x=1/8)の中性子弾性散乱実験から、T_1以下で電荷(ホール)とスピンのストライプ秩序が生じるために、系が絶縁体的となることが示された。そして、T_1以下での結晶ポテンシャルは、電荷(ホール)をピン止めし、ストライプ秩序の安定化に寄与すると考えられた。実際、本研究において、圧力の印加によりT_1での構造相転移を抑制し、ホールに対するピン止めポテンシャルを除くと、ストライプ秩序が揺らぎの状態となって系の伝導性が回復し、超伝導も復活することが示された。 一方、Ndを添加したLa_<2-x>Ba_xCuO_4系では、Ndの添加により構造相転移温度T_1は100K以上に上昇するが、ストライプ状の電荷とスピンの整列温度は60Kに止まる。このためストライプ秩序とT_1での構造相転移との関連性が改めて問題となった。そこで、本研究では、圧力の印加によりT_1での構造相転移を抑制すると、電荷(ホール)とスピンのストライプ秩序にどの様な影響が現れるかを調べた。その結果、構造相転移の抑制に伴って、ストライプ秩序は消失し、Tcが大きく回復する事が明らかとなった。このことから、電荷とスピンのストライプ相関はNdの添加と無関係に60K付近で急速に発達すること、また、T_1以下での結晶ポテンシャルは電荷(ホール)のピン止めを通してストライプ秩序の安定化に寄与する事が結論された。
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