研究概要 |
本年度の前半は、環八雲に関する都市気候学的解析および総合観測の結果を取りまとめた.8月には,筑波大学・東京都立大学・東京商船大学のほか石川島播磨重工業K.K.光プロジェクト部,東京都環境科学研究所の協力を得て,環八雲の総合観測を実施した.後半は総合観測の解析を進めると共に,環八雲の航空機観測とモテリングの方法を検討した.主な実績を列挙すると,以下のようである. 1.都市気候学的解析(1988年8月21日)東京都大気汚染常時測定局などの地上気象資料を用いた都市気候学的解析より,環八雲の形成機構を次のように推論した.すなわち,環八雲は(1)環状八号線沿いのヒートアイランドによる上昇気流,(2)東京湾と相模湾からの海風の収束,(3)水蒸気・エアロゾルの供給の条件が重なったとき,環状八号線道路上空で発生する.また,静止気象衛星の画像でも,環状八号線沿いに細長く延びる積雲列,すなわち環八雲が確認された. 総合観測(1994年8月)1994年の夏は猛暑となり,午後には海風が発達し,しばしば複数の積雲列(環八雲)が観測された.特に顕著な環八雲が観測された8月8日15時の場合,環八雲は混合層の直上高度約1,100mに出現した.この領域は,混合層と自由大気の間のエントレーメントゾーンに相当する.混合層内は南風(海風),積雲より上は東風であった.観測された雲の形状が複数列で筋状であることから,収束曇のほか、「風シア-中の熱対流」という視点から形成機構を説明することもできる. 総合観測(1995年8月)1995年の夏は昨年同様猛暑となったが,観測期間中の8月上旬.環八雲は出現しなかった。このことは、太平洋高気圧のもつ気団の性質(湿度,凝結高度など)が環八雲の形成にとって重要であることを示唆している.8月4日には,海風前線がメソスケールの規模で都心のダストを内陸に輸送する現象が観測された.
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