研究概要 |
東京上空には自然起源のエアロゾル(海塩粒子,土壌粒子など)のほか,人間活動によるかなりの量のエアロゾルが浮遊している(ここでは東京エアロゾル層と呼ぶ).エアロゾルの排出源として,工場などの固定排出源と自動車などの移動排出源がある.東京エアロゾル層は,環八雲の形成要因として重要である. 本研究では,このような東京エアロゾル層の動態を解明するために,1996年の春季(3月27日〜28日)と夏季(8月5日〜10日),東京都の江東区,世田谷区,八王子市で,航空機・ライダー・境界層観測を実施した. 春季航空機観測により,ヘリコプターによる観測手法を確立することができた.夏の本観測の期間中は,夏季としてはめずらしく,北東気流が吹き,曇りがちの天気となった.晴れ間のみえた8月9日,航空機観測を行い,都市混合層と自由大気におけるエアロゾル・気象要素の空間分布を探ることができた.都市混合層とその上空の自由大気との間で,エアロゾルの粒径分布や組成に差異が認められた.また,北東気流系のとき,関東平野に分布する積雲の特徴を観察することができた. 観測のハイライトは,航空機観測・ライダー観測・ラジオゾンデ観測がよい一致をみたことである.このことは混合層によって,地上起源のエアロゾルが鉛直方向に輸送され,エアロゾル層が形成されることを意味する.エアロゾル層の上限高度は混合層高度とほぼ一致した.エアロゾル層の中では粒径分布がほぼ一様で,ススが多いのが特徴である.もう一つのハイライトは,江東区→世田谷区→八王子市と内陸に行くに従って,1)混合層が高い,2)積雲が厚く発達しているなど特徴がみられることである.
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