1、ポルフィリン-ピロメリットイミド2元系分子のピロメリットイミド側に正電荷として4級アンモニウム塩サイトを有するモデルの電子移動速度を様々な溶媒中で定常蛍光、蛍光寿命、過渡吸収などで決定した。ベンゼン中では、フリーベースポルフィリンからピロメリットイミドへ約100ピコ秒位の時定数で電子移動するが過渡吸収で実際にイオンペア状態が観測された。ピロメリットイミドの近傍にあるアンモニウム荷電サイトとのクローン相互作用でイオンペア状態は安定化されるため、電子移動は加速される。一方、DMFのような極性溶媒では、この加速効果は弱い。また、塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化溶媒では、荷電サイトの無い参照モデルでも著しい蛍光消光が見られ、この場合も荷電サイトの効果は少ない。これまで、光合成反応中心モデルとして開発してきたダイマー-モノマー-ピロメリットイミド3元系モデルの特定の箇所への荷電サイトの導入を10数ステップの合成を経て行い、対応するモデルの合成を完了した。ダイマーの蛍光消光が加速されており、有望である。今後、過渡吸収等で電子移動ダイナミックスを明らかにし、複雑な分子系での荷電サイトの効果を解明する予定である。 2、ジイミド型電子受容体と2、6-ジアシルアミノピリジン側鎖を有するポルフィリンモデルの水素結合錯体の錯体内電子移動速度を極めて類似したエネルギーギャップを有する炭素-炭素結合で繋がれたポルフィリン-イミドと比較した。水素結合型錯体の電子移動速度を蛍光寿命から求めたところ、約60ピコ秒の時定数が得られた。過渡吸収法ではイオンペア状態が明確に検出され、その生成は10ピコ秒程度、またイオンペアの減衰は200-250ピコ秒であることがわかった。一方、共有結合で繋がれたモデルでは10ピコで電子移動してイオンペアが生成し、1.6ナノ秒で逆電子移動によりイオンペアが基底状態に失活する。従って、水素結合を介して相当大きな電子交換相互作用が可能であることになる。
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