研究概要 |
1.Bi-2222相の焼結体試料は、Bi-2212相と異なり、高酸素圧下でアニールすることによって、はじめて超伝導を示すことが知られている。本研究では、高酸素圧アニールの代わりに、ハロゲンのインターカレーションによるBi-2222相Bi_2Sr_2(Gd_<0.82>Ce_<0.18>)_2Cu_2O_<10+δ>の超伝導化をめざした。すなわち、インターカラントとホストとの間の電荷移動によってホストのCuO_2面にキャリヤ-を供給し、超伝導化させることを試みた。ハロゲンとしてI_2、Br_2、IBrを選び、いずれのインターカレーションにも成功したが、超伝導は、I_2の場合は現れず、Br_2でわずかに現れ、IBrでTc=20Kのバルクの超伝導が出現した。超伝導の現れ方のハロゲンによる違いは、インターカレートされたハロゲンのイオン化率の違いによると解釈できた。また、Bi-2222相の超伝導出現における高酸素圧アニールの役割については、よく理解されていなかったが、本研究から、CuO_2面の酸素欠損の補填ではなく、過剰酸素によるCuO_2面への十分なキャリヤ-の供給であると結論できた。 2.Bi-2212相のインターカラントとしては、ハロゲン(I_2,Br_2,IBr)やAgI、Hg_2Cl_2が知られているが、本研究では、新しいインターカラントの探索も行った。インターカラントの候補物質として、(1)ハロゲン化物(BiO-BiO二重層は正に帯電しているので、負にイオン化しやすいものがよいため)、(2)比較的大きい分子(インターカレーションよるc軸長の大きな増大が得られるため)、(3)融点、沸点が低い物質(蒸気反応法で作製するのに便利なため)(4)昇華性のある物質、を選んだ。実際にインターカレーションを試みた物質は、NH_4I、BiBr_3、AlI_3であった。しかし、残念ながら、いずれの物質もインターカレートさせることはできなかった。
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