昨年度の経費で作製したMBE装置に直結する真空紫外分光システムをたちあげ、アルカリハライド超薄膜の光学特性の測定を開発した。従来のエピタキシャル成長の研究で層状成長し、界面での混晶が少ないことを確認したKI/KCl系について、種々の膜厚のKI層をKCl基板の上に作成し、直結する真空紫外分光システムに搬送してその励起子のエネルギーの膜厚依存性を詳細に検討した。その結果、励起子の重心運動の閉じ込めによるブルーシフトが明らかに存在し、そのシフト量の膜厚依存性は単純な井戸型ポテンシャルから求められる表式により記述されることがわかった。また励起子の重心運動の有効質量は、従来報告されているホール質量、伝導帯の電子質量と比較的よい一致を示している。現在、界面混晶が起きやすいと考えられているKBr/KCl系や、島状成長をしているKBr/LiF系についての測定を進めており、アルカリハライド超薄膜の励起子のサイズ効果について統一的モデルを考察中である。 一方、アルカリハライド(111)極性面の成長に関しては、昨年度発見した「GaAsの(111)基板上にまず銅ハライドを成長させ、その上にNaClを成長させると、回析像で見る限りかなり平坦なNaCl(111)面が成長すること」の起源を明らかにするため、従来の手法に加えて、紫外光電子スペクトルや二次電子スペクトルの測定をおこなった。その結果、銅ハライドから解離したCu原子がサーファクタント的な役目をして成長進行と共に常にNaCl(111)表面に微量存在し、エネルギー的に不安定な(111)を安定化させていることを明らかにした。
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