高温超伝導体のc軸偏光反射スペクトルで観測される遠赤外プラズマは、La系での発見を契機にY系、Pb系など他の高温超伝導体でも確認され、一般的な現象であることが認識された。唯、Bi系での観測は難しかったが、プリンストン大(米国)や北大による測定で、Bi系のプラズマ周波数は、遠赤外より更に低いマイクロ波領域にあることが判明した。また、これらのプラズマは、CuO_2超伝導層がc軸方向にジョセフソン結合していることにより生ずることから、現在はジョセフソン・プラズマと呼ばれるに至った。本研究では、La系とY系とを対象として、このプラズマ周波数が、ド-ピング量、Cu原子のZn原子による置換、更に外部からの磁場の印加によりどのように変化するかを追求した。また、試料の厚さを薄くして、プラズマ波が高温超伝導結晶中をいかに伝播し、どのような減衰を受けるのかを調べた。これらの実験により以下の事柄が明らかになった。 1.ジョセフソン・プラズマ周波数(ω_p)は、臨界温度T_c直上、常伝導状態のc軸電気抵抗率の値で決定されている。従って、Bi系のように極端に大きな異方性をもち、c軸電気抵抗率が小さな物質では、マイクロ波領域に抑圧されることになる。また、同一の系で、異方性はド-ピング量とともに小さくなり、それに伴い、ω_pが増大することも明らかになった。 2.高温超伝導体は、ω_pより高周波のc軸偏光遠赤外光に対して透明になる。これは、光がジョセフソン・プラズマと結合したポラリトンとして結晶中を伝播するためであることが薄い結晶の実験で検証された。ポラリトンは結晶中で弱い減衰を受けている。本研究により、この減衰がd波ク-パ-対形成に付随した本質的なものであることが明らかになった。 3.Bi系のω_pは、磁場の印加により大きく変化する。一方、本研究で行ったLa系の実験では、ω_pが殆ど変化しないことがわかった。この違いは磁束のピン止めの強さに関係しており、ピン止めはド-ピング量とともに強くなることを示した。
|