研究概要 |
1.強磁性・半導体多層膜融合系ZnSe/Feの作製と評価。第二世代の新しい半導体・磁性体の融合系超構造(半導体と磁性体により構成される多層膜や量子井戸)としての磁性体薄膜と半導体薄膜との多層膜構造に関する研究を開始した。半導体層として、ワイドギャップ半導体の代表格であるZnSeを用い、ZnSe/Fe多層膜の作製と評価を行った。多層膜試料の磁気光学効果が半導体(ZnSe)や磁性体(Fe)の単層膜と大きく異なり、両層の磁気的ないし光学的相互作用に起因している可能性が強いことを実験的に示した。 2.融合系ヘテロ構造(In,Mn)As/(Al,Ga)Sbの磁性と伝導の研究。試料のキャリヤ輸送を系統的に調べ、キャリヤ濃度と磁性との関連を研究した結果、キャリヤ誘起強磁性について以下のことが明らかとなった。すなわち、 (1)正孔濃度が強磁性を誘起する臨界値よりも高い場合、ホール効果係数の符号は恒に正(+)である、 (2)正孔濃度が臨界値近傍だと、ホール効果係数の符号が負(-)に反転して、見かけ上n型伝導を示す、 (3)正孔濃度が臨界値を大きく下回ると、ホール効果係数の符号は再び正(+)となる。 これらの結果は、磁性によるバンド構造の変化に起因している可能性があり、学術上極めて興味深い問題である。 3.考察。このテーマに関する基礎・応用研究を更に独創的かつ発展的に展開していくには、材料学的アプローチのほかに、物理的手法によりキャリヤ濃度を変化させて磁性や半導体物性の変調を研究することが極めて重要であると考えている。すなわち、電界や光照射による磁性の制御の研究が重要と考える。こうした研究で得られる基礎データの積み重ねが、新機能デバイスへの創出(光磁気スイッチや不揮発性磁性半導体メモリなど)につながると信ずる。今後、ア)キャリヤ誘起磁性の解明と制御、イ)電界あるいは光による磁性の制御、ウ)ワイドギャップ半導体・磁性体融合系超構造の作製と評価、に関する研究を更に追究する。
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