集積半導体デバイスプロセスに不可欠な不純物ゲッタリングの機構を解明するために、Siウエハ-の局所構造変化ならびに格子歪みを電子顕微鏡を用いての解析した。拡大像観察のほかに、直径約20nmの微小領域から得た収束電子回折の透過波ディスク中に現れる高次ラウエゾーン反射パターンから局所領域の歪みを評価した。また、試料面上の直径約5μmの領域にディフォーカス大角度収束電子ビームを照射して得られる回折線とシャドウイメージから歪みの二次元分布を求めた。酸化物析出処理(ドライ酸素雰囲気、1000°Cで16時間保持)をしたウエハ-内の析出粒子周辺を調べ、以下の結果を得た。 1.酸素析出粒子の形態は、厚さ数nm以下、一辺の長さ500nm以下の板状をしており、板面はSi母相の{100}面に平行、側面は母相の{110}方向に平行である。 2.板状析出粒子を含む粒子から得られたマイクロビーム電子回折図形には母相Siの回折斑点以外に余分斑点もハロ-パターンも認められなかった。一方、超高圧電子顕微鏡を使って観察した[411]制限視野回折にはSi以外の弱い余分な回折斑点がみとめられた。しかし、現時点では析出粒子が結晶か、非晶質か断定できない。 3.析出粒子の板面に平行な[012]方向から高次ラウエゾーン反射パターンを観察した結果、Si格子は粒子周辺で正方晶に歪んでいることがわかった。(100)板面近傍では-0.4%程度の圧縮歪みが、(110)側面近傍には+0.3%程度の引っ張り歪みが存在し、これらの歪みは界面から約1μmの所でほぼ消失していた。
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