本研究課題に関する成果としては、作製したカーボンナノチューブを真空度があまり高くない真空中(〜10^<-4>Torr)で、タングステンヒーターを用いて約250℃に加熱すると、カーボンナノチューブの表面全体に複雑なコーティングがなされることがわかった。分析電顕による解析で、WとOの存在が確認された。低真空中でタングステンヒーターを加熱したため、昇華しやすい酸化タングステンができ、それがナノチューブに付着して再成長したように見えるものと考えられる。モルフォロジーとしてはそれと類似した太くなったカーボンナノチューブが、全く熱処理しないときでも、アーク電流が多いときや、雰囲気ガスの圧力が高いときに、作製した直後のカーボンナノチューブ表面に見られる場合があることがわかった。 ごく最近、雰囲気ガスとしてH_2ガスを用いて蒸発を行うと、細くて長い良質のカーボンナノチューブが得られることがわかった。その場合、ナノチューブに混入するナノ粒子の割合も非常に少なく、大変望ましい試料であることが明らかになった。また、その試料を空気中で赤外線放射加熱装置を用いて、約500℃に30分間加熱することによって、ナノ粒子が完全に除去できることもわかった。さらに、アーク放電による蒸発の際、放電が安定して生じている1分間くらいは、陰極上に生じるナノチューブの方位が電気力線の方向にそろって、一方向に並んだカーボンナノチューブが体積にして1mm^3のオーダー得られることがわかった。この量は、従来のナノチューブの大量製法で得られたものに比べてけた違いに多いことから、物性測定あるいは電子材料としての応用が期待される。
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