研究概要 |
材料内の異種原子やそのクラスターの像をその元素を識別して撮影するため、原子内殻電子を励起してエネルギーを失って散乱する電子のみを用いて高倍率で結像することを行った。これには原子解像能力をもつ電子顕微鏡の下にセクター型のエネルギー分光器をとりつけ、制限されたエネルギーの電子のみをえらび出し、これを用いて原子解像電子顕微鏡像に復元する方法を用いた。内殻励起電子の強度は入射電子の100〜10,000倍位弱いため、記録時間は数十秒から1時間を必要とする。この時間では像のドリフトで生じる像の乱れがあるのでこれを止めるため、ドリフトを検出し、逆向きの移動にして試料に加える装置、ドリフトフリーのゴニオメータを日本電子の協力を得て製作した。そしてこれを現在使用中の、400kV電子顕微鏡に取り付けた。すなわち試料を保持するゴニオメーターステージをピエゾ素子を内蔵するゴニオメーターで置き換え、これを0.02nm以下のステップで100nm程度の移動が可能な様に作った。ドリフトの検出、ピエゾ素子の駆動にはPC9801を用いて行った。この装置は平成7年10月下旬に納入取り付けたが、ドリフト補正が不充分であったので、日本電子社へ持ち帰り、再設計製造加工調整を行い平成8年3月初めに再取り付けを完了した。然し、原子レベルのドリフトは長時間一定でなく不規則にうごくので最新の200kVの電解放射電子を用いる顕微鏡で実験を行った。観察にはCa原子列を結晶格子内にもつ高温超電導材を試料にしてCaの内殻L_<2,3>の励起によるエネルギースペクトルのピーク部(348±3)eVを用いて像を作り、これからそのバックグランドを用いて作った像を差し引くことを行った。これは40秒〜120秒づつかけた像の差であった。然し、これでも露出量は十分でなく、ノイズの多いものとなったので、画像処理をいろいろ試みてCa原子が1列、2列、3列並んでいる像が得られた。
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