本研究の目的は、金属/半導体コンタクトの特性を決定するショットキー障壁高さの決定要因を微視的界面状態の観点から解明し、コンタクト抵抗率との相関を明らかにすると共に、障壁高さを制御するための手法を確立することである。具体的には、平成8年度は、CoSi_2/Si(100)界面の形成過程と電気的特性、界面反応に与えるSi表面の水素終端効果、について明らかにした。得られた主な結果は以下の通りである。 (1)Si(100)-2x1清浄表面上に厚さの異なるCo膜を堆積させ、熱処理によるCoSi_2エピタキシャル成長過程とその結晶学的構造を調べた。その結果、3MLのCo膜をSi(100)基板上に堆積させた場合には、熱処理条件を最適化することにより、原子的に平坦なCoSi_2(100)膜がSi(100)面上に成長することが分かった。また、ピンホールの形成は熱処理時間に依存し、530℃熱処理では約10%のピンホール面積で飽和する。1MLのCo膜の場合には、CoSi2(100)が島上成長する。すなわち、初期反応状態によりSi(100)面上に形成されるCoSi_2膜の面方位が異なり、そのため界面の結晶学的構造も異なることが明らかとなった。トンネル顕微鏡法およびトンネル分光法により、形成されたCoSi_2膜の電子状態を明らかにすると共に、電気的特性からショットキー障壁高さを求めた。 (2)Hf/Si(100)系を用いて、水素終端処理がコンタクト界面のポテンシャル障壁や固相反応に与える影響を調べた。水素終端されたSi(100)基板表面は、残存不純物が少なく、酸素の吸着や酸化に対して非常に安定であることが高分解能電子エネルギー損失分光法(HREELS)、光電子分光法(XPS)により確認した。また、水素終端表面を用いて形成されたHf/Si界面では、特にp-Siに対する電気的特性が大きく改善され、理想的な界面状態に近付くことが明らかとなった。
|