本研究で明らかにされた点とそれらに関連する今後の展望を下記にまとめる. 1.表面励起子を生成したときに起こる準安定粒子の脱離に対して提唱されていたcavity-ejectionモデルを脱離粒子の運動エネルギー分布、角度分布などの評細な測定と照らし合わせ.その妥協性を確認し詳細を明らかにした.さらにその脱離の絶対収率を測定することに成功し.励起・緩和過程の定量的な描像を解明する第一歩を踏み出した. 2.表面にのみ許容されるNeの2p^53p型表面励起子を出発点とする脱離と緩和過程が.その微細構造に関連して複雑な側面を持つことを見いだした.その詳細の解明は今後の課題である. 3.希ガス混合固体での脱離現象を観察し.異種原子間の励起エネルギーの移動.混合系での励起子の拡散などの機構に起因すると考えられる.脱離種の選択性などの特徴的な現象を見いだした.希ガス以外の物質も含め.種々の混合系での系統的な研究は今後の課題であり.それにより凝縮系という濃い系を舞台とした電子的励起の移動の物理が明らかにされると期待できる. 4.真空中の水素の微量の吸着が表面からの脱離過程に大きな影響を与えることを明らかにした.これはこれまでの各方面から出されていたデータの再検討を要求するものであり.また.特に真空科学で問題となる低温面からの気体放出現象などに関連して.応用面でも重要な発見であるといえる. 励起状態の微細構造の中での脱励起のカスケード.励起子の拡散などの素過程を反映していると考えられる現象の端緒を捕らえることができた.これらを今後の研究の目標とする.
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