脂質マトリックスにゲスト極性分子を埋め込んだ単分子層のモデル系としてアラキン酸(C_<20>)とメロシアニン(MS)の混合単分子層を取り上げ、これを基板上に累積してLB膜とし、分光学的測定・X線回析法などにより構造評価を行った。単分散状態のMSの吸収極大は540nm付近にあるが、通常の条件下でLB膜を作製すると、膜中にMSのJ会合体が形成され、590nm付近に顕著なレッドシフトピークをもつ青膜が得られる。この度、我々は、水相のpH値、温度、表面圧などの成膜条件の調節により、この膜系中に顕著なブルーシフトをしめすH-会合体を形成することに成功した(本年3月28日、第43回応用物理学関係連合大会において発表)。また、油汚染の少ないターボ分子ポンプ真空系を用いて純C_<20>LB膜およびC_<20>-MS混合LB膜の電極付き試料を作製し、低周波および超低周波領域での電気容量および誘電損の測定を行った。50Hz〜100KHzの低周波数領域ではキャパシタンス・ブリッジによるゼロ・メソッド、2×10^<-1>Hz以下の超低周波領域ではリサジュー法が用いられた。低周波領域、超低周波領域の何れにおいてもコンダクタンスGがG∝ω^aのようにベキ関数則に従う成分が顕著に現われた。指数aの値は、低周波領域の約0.7に対し、超低周波領域では0.5と、明らかに減少しており、所謂、異常分散の特徴を示した。このことから、この系がキャリア性の導電機構を持つことが強く示唆された(本年3月28日、第43回応用物理学関係連合大会において発表)。さらに、以上の結果を踏まえて、新たな脂質マトリックス組成およびゲスト極性分子の組合せの検討に着手した。
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