脂質マトリックスとゲスト極性分子から成るモデル系-アラキン酸(C_<20>)とメロシアニン色素(MS)との混合単分子層-を用いてサンドイッチ型アルミニウム電極付きLB膜試料を作製し、累積した単分子層の数および分子組成比と導電・誘電特性との相関を検討した。単分子層数はN=1および3、分子組成比は〔MS〕:〔C_<20>〕=0:1、1:5および1:2とした。各Nおよび〔MS〕:〔C_<20>〕の組合わせにつき、十数個から数十個の試料の電気容量と誘電損因子を10^<-4>Hz〜2×10^<-1>Hzの超低周波領域、および50Hz〜100KHzの低周波領域において測定した。さらに、得られたデータに非線形の最小2乗法を適用し、コンダクタンスの直流成分G(0)、ベキ関数型成分G_<PL>∝ω^a(0<a<1)、および、外部回路の抵抗Rcの三者を分離し、その各々を統計処理することによって層数および組成比との相関を検討した。ベキ指数aの値は、単分子層試料(N=1)では、組成比〔MS〕:〔C_<20>〕=0:1と1:5とでほぼ等しく〔MS〕:〔C_<20>〕=1:2 で有意の減少が見られたのに対し、N=3の場合には〔MS〕:〔C_<20>〕=1:5が最小のa値を示した。LB膜系の構造や組成と誘電・導電特性の相関のこの種の組織的検討は従来殆ど知られていない試みである。これらの結果の一部は、第57回応用物理学会学術講演会(平成8年9月7日)、1996年電子情報通信学会ソサイエティ大会(平成8年9月18日)、The 1st Asian Symposium on 'Organized Molecular Films for Electronics and Photonics'(ASOMF'1)(平成8年10月28日)、および第44回応用物理学関係連合講演会(平成9年3月28日)で発表された。 また、以上の結果を踏まえ、導電性LB成膜分子、分子鎖長の異なる各種の脂肪酸やアルカンなどを含む新たな混合LB膜モデル系の検討を進めている。
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