研究概要 |
本研究では,周波数シフト帰還型レーザー(ファジ-モードレーザー)の基礎と応用に関する研究を行った.まず,利得媒質として半導体レーザー励起Nd : YVO_4結晶,周波数シフト素子として音響光学素子を有する全固体型の周波数シフト帰還型レーザーを構成し,その発振を確認した.発振特性について干渉実験を行った結果,レーザー出力には超高速にチャープを受ける瞬時周波数成分が縦モード周波数毎に存在するということを明らかにした.さらに発振機構について理論解析した結果,レーザー媒質の遷移周波数の横緩和過程に伴うランダムで高速な位相変調成分のうち,周波数シフトが存在下での共振条件を満たす光波の位相のみが帰還的に増幅され,上述の瞬時周波数成分が生成されることを明らかにした.実験結果をよく説明できる解析は,本研究以外ではなされたことがなく,本研究の特筆すべき成果の一つである. 超高速チャープ(100PHz/sオーダー)と縦モード周波数毎に次々に新たな成分が生成されるという特徴を利用して,周波数シフト帰還型レーザーの光リフレクトメリへの応用にも取り組んだ.測定精度を検討は,偏波面保持ファイバーを片側の光路とするマイケルソン干渉計を用いて行った.これまでに初期的な結果として,約100m遠方において100μm以下という非常に高い距離測定精度を得ることが可能であることを確認しており,さらに測定レンジの拡大,精度の向上が可能であると考えられる. 以上本研究では,周波数シフト帰還型レーザーの基礎と応用に関して,発振機構について非常に有益な知見を得るとともに,高精度光計測への応用が可能であることを示した.
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