完全に近い単結晶でのX線の非対称反射では等時間波面は伝播ベクトルと垂直にならない。したがって、非対称反射を前置光学系として用いると、X線干渉計の内部には光路差のない干渉計を用いて、極めて一般的なX線可干渉距離測定法を作り得る。本研究では、(i)不等間隔X線干渉計の作製及び評価技術の確立、(ii)非対称反射の可干渉性への影響の実験的な確認と、それを用いた可干渉性の操作・制御方法の確立、(iii)不等間隔干渉計を用いたX線可干渉距離決定方法の確立の3段階によって、X線領域での可干渉性の制御・操作と定量的な計測方法を開発することを目的としている。15EA02:平成7年度には傾斜アナライザーX線干渉計の設計・製作を行い、そこでの回折現象を理論的に検討した。完全なコヒーレントX線入射を仮定した平面波動力学的回折理論を用いた検討により、アナライザー結晶を傾斜させた効果として従来知られていなかった新しい干渉現象が出現することを確認した。製作されたX線干渉計は、既存のX線回折計により、等間隔干渉計となる入射条件で干渉パターンを測定し、干渉計自体に問題がないことが確認され、この干渉計を用いて、高エネルギー物理学研究所フォトンファクトリィに既存の疑似平面波X線光学系で入射ビームを作った干渉測定を行い、理論的に予測された新しい干渉現象を確認するとともに、観察された干渉縞が、X線に有限な可干渉性のためにモジュレートされることが見いだされた。この実験結果から、X線の空間的コヒーレンス長が解析された。また、非対称反射の可干渉性への影響の実験的な確認と、それを用いた可干渉性の操作・制御方法の確立にむけての予備的な実験研究が行われ、次年度の研究に対する指針が得られた。
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