X線領域での空間的可干渉性測定は、従来の振幅分割を用いるX線干渉計では困難であったが、新たに波面分割が可能なX線干渉計を考案し、その設計・製作及び放射光X線を用いた可干渉性計測を行った。X線領域での波面分割干渉計は、ラウエーラウエーラウエ型の単結晶干渉計で最後のアナライザ結晶を傾斜配置にする不等間隔X線干渉計によって実現した。この干渉計によって時間的可干渉性に影響されずに純粋な空間的可干渉性を測定するための前置光学系を検討した結果、非対称反射が等時刻波面を傾けしかもその傾きは非対称因子に依存することを利用することにより、等時刻波面の分割による時間的可干渉性の影響を受けない測定法が可能であることを明らかにした。これを一般的な入射エネルギーで実現するためには、前置光学系の非対称因子を連続的に可変にすることが必要となる。このために、非対称カット結晶をその回折ベクトルの周りに回転して非対称因子を変化させる方法を用い、これを可能とする結晶面内回転機構を設計・製作した。 アナライザ結晶を傾斜配置としたラウエーラウエーラウエ型の単結晶干渉計について、動力学的回折理論に基づく期待される干渉パターンの理論計算を行い、今まで報告されていなかった干渉縞が生成されるとの結論を得た。放射光での実験ではこの干渉縞が確認されたが、無限長の可干渉性を仮定した理論計算結果とは異なり、干渉縞のビジビリティが空間的に変調されていることが観測された。これは、本研究で期待していた有限な空間的可干渉性を反映したものである。ここで観測された空間的変調を、光学での空間的可干渉性に関する標準的な理論であるVan Cittert-Zernikeの定理を用いて解析した。この結果は、放射光光源である陽電子ビームサイズに対する知見を与えるが、ここでの測定結果の解析から算出されたビームサイズと他の方法で測定されていたビームサイズの値はほぼ一致した。
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