研究概要 |
電気光学変調、偏向、自己位相変調、4光波混合など様々な方法で光波にTHzに及ぶ広帯域の側波帯を生成させることができる.このような光波においてはその強度,位相,周波数,あるいは波面等にTHzの速さで変化する成分が含まれるため,光整流、光導電など広い意味での非線形光学効果を用いてベースバンドに相当するTHz帯の電磁波を抽出することが可能と考えられる。これは光波を介した一種の非常に高次の逓倍と見ることもでき、実用技術としても、あるいは、分光など学術的にも大きな意義がある。本研究では、超広帯域の側波帯をもつ光波を生成し、従来は発生が困難であったTHz帯の電磁波の発生に利用する方法を開発することを目的としている。本年度は,まず,広帯域光側波帯生成法の開発を主に研究を進めた。分極反転疑似速度整合電気光学位相変調を用いたTHzサイドバンド生成についてはその技術を確実なものとし(世界記録の3THz-FMサイドバンド生成,1995CLEO発表),さらに広帯域化を目指した多重路動作に計画を進め,5THz〜10THzではさらに光学性質の良い結晶が必要なことが結論された.なおこの結果,CW-FM光から500fs光パルス(2THz程度の高周波変動成分を含む)の直接生成とその光電検出に成功している.ついで,新しい光電変換系として逆電気光学効果,光導電(実吸収,ヴァーチャル遷移)変換,光整流についての理論的検討を行った.この結果波長に比べ十分薄い電気光学結晶を金属(光学域では導体ではなく負誘電体)挟んだ表面プラズモンポラリトン素子(研究者らの考案,1955QELS)での逆電気光学効果(光整流)による電磁波生成の可能性を導いた。さらに光強度のみならず位相,周波数の高速変化による電磁波への変換についても可能性を追求した。また,当研究者が世界に先駆け提案した共鳴2連光パルス(コヒーレントプッシュプルパルス)による実吸収キャンセル励起を用いた寿命フリー光電変換(1990 QELSで提案)については、はからずも日立ケンブリッジでこの動作が寿命フリー光光スイッチとして確認(多くの全国紙で掲載)され,THz電磁波生成への応用の可能性が導かれている。
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