1.結合した自由度(発振モード)間の相互作用を特徴づける、時間発展する新しい統計量として、「還流」の概念を導入し、従来のリアプノフ解析、ポアンカレ写像などの長時間統計では評価できない各自由度のもつ物理量の相関を実時間で有効に特徴づけることを示した。この手法を変調多モードレーザモデルのダイナミクスの解析に適用し、本モデルで見出された「種光パルス注入法による階乗的パターン記憶」、「グル-ピングカオス」、「協働的カオス同期」の物理的素過程を解明するとともに、これらの動作を発現する規範である“利得還流和消滅則"を検証した。 2.共振器内第二高調波発生多モードレーザモデルについてそのダイナミクスを数値解析により検討し、位相周期運動が崩壊する過程で、共存する反位相状態のアトラクター残骸間を自己スイッチングする「カオス的遍歴」が発現することを見出した。還流解析により、その素過程を解明するとともに、このスイッチングはランダムな外力では起こりえないというカオス的遍歴の重要な属性を検証した。同モデルで、第二高調波への変換効率の大きな領域でのダイナミクスの解析から、複雑系における階乗的な動的パターンの共存性、パターン間のヘテロクリニックなスイチング経路の自己形成およびスイッチング経路の人為的制御などを見出した。さらに、多モードレーザの反位相運動により発現する量子雑音スペクトルの普遍関係を解析的に導き、LNPレーザによる実験で検証した。 3.カオス的緩和振動状態を、周期倍化分岐の過程で出現する分周期振動の近接での微少な摂動により安定化する手法を自己光混合変調法により、多モード発振LNPレーザで実証し、多モードレーザレート方程式の解析により理論的に検証した。また、多チャネル自己光混合多重周波数同時変調により多モードレーザにおける「多重パラメトリック共鳴緩和振動」を見出した。変調信号の動的空間パターンへの変換、変調パターンと変調全出力のパワースペクトルパターン間の対応関係をLD励起多モードLNPレーザでの実験および数値解析により明らかにし、複雑系での自己組織的“線形応答"の発現と半古典論的秘守通信への応用を提案した。 4.高密度LD励起LNPレーザにおける多重遷移同時発振、特異な入出力特性および反位相不安定性を実験的に見出し高Nd濃度レーザに特徴的な共鳴再吸収効果、オージェ再結合効果および多重遷移レーザ系によるPOPULATION TRAPPINGなどを導入した解析により理論的に再現した。
|