研究概要 |
マイクロ超音波モータの性能を大きく左右するのが、PZT薄膜である。薄膜を成膜する水熱合成法は、立体形状物への成膜が可能で成膜中に分極方向が揃うという優れた特長をもつ。従来は東工大の無機材料学科の報告をもとに結晶核生成過程と結晶核成長過程という2段階で構成されていた。しかし、実際には結晶核生成プロセスではPZTは成膜されず、PT膜の成膜の後にPZが成膜されることがEDX,XRDの測定によって明らかになった。このプロセスでは、薄膜がPT/PZ/PZTという多層構造になる恐れがあり、薄膜の電気機械結合定数を減少される大きな原因となると考えられる。そこで、反応温度や反応溶液濃度、反応促進剤濃度を変更することにより、単一プロセスでPZT薄膜を基板に直接成膜させることに成功した。この新しい方法では、単一プロセスであるため、最適条件の導出が容易である。反応が24時間で飽和していることが確認されたので、効率の良い成膜が可能となった。この方法で成膜したステ-タ振動子によるマイクロ超音波モータを製作し、その回転の立ち上がりの最大加速度から起動トルクを計測することができた。入力電圧5V0-p(to each electrode)において7(microNm)である。これは、従来の成膜方法で製作したモータと比べると約40倍の大きさである。 弾性表面波モータの高推力かは、スライダを多点接触型にすることで可能であることを実験により示した。6ミリ角のスライダで、最大0.45Nの推力が得られた。これは、見掛けの面積の1万分の1の接触面積で実現した推力であることから、さらに10倍以上の高推力化が可能と見られる。 高周波・微小振幅での高推力化と、圧電薄膜の特性改善により、モータの直径を現状の2.4mmから10分の1程度への微小化が充分に可能であることを見いだした。
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