まず最初に1次元フレンケルコントローバモデルにおいて理論的に求めたキンク対の生成頻度、キンクの転位線上の速度、そして転位自体の速度を計算機シミュレーションによって数値的に求め我々の理論の妥当性を示した。次に2次元結晶における転位の動力学を我々の開発したトポロジカルな欠陥に対する拘束系の理論と計算実験の両面から解析した。具体的には、b. c. c.結晶中の螺旋転位の2次元格子模型(鈴木モデルおよびその拡張版)にたいして転位を導入し外部応力のもとでのパイエルスポテンシャルおよび転位芯の構造を拘束系の理論より導いた。これによりモデル依存性と転位速度の外部応力依存性を明かにし、あわせて転位芯構造についての知見を得た。 これまで主として理論及び計算機実験を行ってきた1次元系(フレンケル-コントローバモデル)と違って、2次元及び3次元系においては転位の影響が、転位からかなり遠くでも残るというトポロジカルな違いによる困難が生じる。このため、数値計算上大きな系を取り扱わなければならない。このため、理論上、境界条件、転位の導入の仕方、を工夫しできる限り(事実上)大きな系を取り扱ったことになるようにした。さらに数値計算上もメモリー、CPU時間が節約できるアルゴリズムを工夫しできる限り大きな系を取り扱えるようにした。この計算にこの科学研究費補助金によって購入した設備備品であるワークステイション一式とX端末2台、ノートパソコン及びCDROM装置を活用した。転位芯の構造、パイエルスポテンシャルに関して、1995年6月フランスのオレロン島で開かれた国際会議、“Computer Simulation in Materials Science"、日本物理学会格子欠陥分科会主催第6回格子欠陥フォーラム“転位-現状と将来への展望-"(96年10月)等において発表を行なった。
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