研究概要 |
本研究は,気相成長法により酸化物超電導体膜を結晶配向を制御して形成し,異周速圧延によってその結晶組織を制御することにより,液体窒素温度で臨界電流密度Jc=10000A/cm2程度の性能を持つ酸化物超電導線を作製し,合成条件,圧延条件が電気的特性にどの様な影響を及ぼすかを明らかにするものである.さらに,ローレンツ力に相当する力を作用させて強度を調べることにより,この超電導導体の機械的特性が合成条件および圧延条件によりどの様に変化するかを明らかにし,酸化物超電導導体の作製法の指針を得ようというものである.まず,自作の高周波マグネトロンスパッタ装置を用いてY-Ba-Cu-O薄膜と銀およびマイカの積層膜の合成条件の検討を行った.そして,放電出力40WでAr雰囲気中で合成することにより(111)に高配向した膜が得られることをX線分析により確認した.次に,この銀膜上にYBaCuO膜を配向させて合成するための条件を検討した.その結果,Y: Ba: Cuの比を1:2:3:5としたターゲットを用い,基板温度650℃,圧力1.0×10^<-2>Torr.酸素分圧6.5×10^<-3>Torrの条件で基板をoff-axisに設置することにより,(001)に配向したYBaCuO膜を合成できることがわかった.さらに,この膜の極点X線分析結果より,a, b軸も面内の特定の3方向に揃っていることがわかり,本方法により銀膜上に高配向のYBaCuO膜が合成できることがわかった.さらに,この積層膜上に再度銀膜及びYBaCuO膜を積層させることを試み,若干の配向度の低下はあるものの,安定して多層積層させることのできることを明らかにした.
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