研究概要 |
変形によって喚起される材料のメゾ・スケールの構造の変化による高機能化の可能性に注目し、変形誘起変態あるいは分子鎖の回転の制御により強度,延性,靭性の大幅な向上を図ることを目的とし以下の研究を行った. (1)マルテンサイト変態を伴う塑性現象を利用した鋼(TRIP鋼)をとりあげ,メゾ・スケールせん断帯の交差を主機構とする,温度,ひずみ速度及び応力に依存した変態現象のモデル化を行い変態量の発展方程式の形式で変態量と温度,ひずみ速度,応力の3軸性との関連を表現した. (2)材料に変形を加え,材料内部の変態量を実験的にもとめ,(1)による結果と比較することにより変態現象のモデルの妥当性を検証した. (3)(1)の変態モデルを構成式に組み込み任意の変形のシミュレーションを行なうことができるプログラムを開発し,不均一変形をうける物体の変形挙動のシミュレーションを行い変態量の分布ならびに挙動,延性,靭性を調べた。 (4)(3)のシミュレーションの対象とした物体と同じ物体に変形を加え,実験的に変態量ならびに機械的性質の変化ならびにそれらの値を求めて(3)の結果と比較検討し,その妥当性を検証した. 当初の研究目的に対して,上記のような成果が得られた.これにより,物体の変形挙動を制御することにより変態量の分布を制御し,強度,延性,靭性を変えることが可能となり,金属に対する本研究の初期の目的は達成された.しかしながら,高分子材料に対しては,高分子鎖の絡み点変化メゾスケールモデルを構築したところであり,材料の局所的な構造並びに機械的性質の制御には至っておらず,現在進行中である.
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