研究概要 |
本研究の目的は,電子顕微鏡下でマニピュレータを用いて微小な粒子を機械的に積み上げる方法により3次元的な極微小構造物を製作する『積み上げ造形法』を、機械的な3次元付加加工法として確立し,実際の構造物の製作によってその有効性を検証することにある. (1)微粒子の吸着・離脱制御手法の確立:前年度の研究で微小体に働く力は主に静電力であることが明らかになっていたが,今年度は系統的な実験と数値計算によるシミュレーションにより,それが帯電電位の他に表面粗さや工具との対向面積にも依存することを明らかにした.また,特に高分子微粒子では接触部での粘弾性変形により,付着力が経時的に増大することを実験的に明らかにした.以上の知見に基づき,工具の接触面積を変化させて微粒子をプレースする手法や,基板に付着した微粒子を横にすべらせて吸着力を初期化することによりピックアップする手法を確立した. (2)積み上げ造形システムの統合:積み上げ造形システムに新たに画像制御手法を取り入れ,微粒子の挙動を監視しながら自動的に工具先端に吸着させて持ち上げる手法を確立した. (3)積み上げ造形法の評価:極微小3次元構造物の具体例として,多重散乱により光の放射の量子制御効果が発現すると理論上予測されながら,これまで製作技術の制約により実現されていなかったフォトニック結晶を取り上げた.直径2μmの微小球を3次元的に積み上げて製作した結晶による可視光の回析パターンや反射スペクトルを計測し,理論的に予想されるとおりの多重散乱が生じることを確認した.これが光波帯の電磁波に対しての3次元フォトニック結晶を実現した最初の例であり,積み上げ造形法の有効性を示すことができた.
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