研究概要 |
表面粗さを持つ転がり-滑り接触面において、滑りに伴う粗面の移動を考慮し,非定常項を含むレイノルズ方程式と弾性変形および高圧下の粘度上昇を考慮した弾性流体潤滑の理論解析を試みた.転がり方向に直交する横方向粗さの一次元流・二次元弾性変形の場合には,ニュートン・ラプソン法により正弦波状粗さモデルあるいは台形状粗さモデルを用いて膜厚比が2.0より大きい範囲で表面粗さの大きさを変えた圧力分布・膜形状・内部応力の計算が可能となり,さらに,半楕円表面き裂・二平面恒星あるいは三平面構成など複雑な三次元形状のき裂に対して体積力法による応力拡大係数を計算する一連の計算プログラムを完成することができた.しかしながら,旋削面のような転がり方向(縦方向)粗さの場合には,二次元流・三次元弾性変形となるが,最終的に収束した解を得ることが困難で,まだ解析法が完成したとは言えない状態である。これまでの粗面の直接接触状態と粗面EHL状態における表面き裂の応力拡大係数の計算により,異なる粗さ形状をもつ部分と接触して突起位置とき裂位置の関係が接触の繰り返し毎に変化することが転がり疲れき裂の伝ぱに重要な役割をもっていることが明らかとなり,これまでの転がり疲れの実験結果を理論的に裏付けている.このことについては横浜で開催された国際会議で発表した.実験的には,転がり疲れき裂の伝ぱ過程の顕微鏡下でのピデオ撮影による連続観察を行い,低速側と高速側のき裂発生と伝ぱの特徴や粗さの方向性の影響を調べている.横方向粗さの容易なEHL膜形成によりピッチング寿命が増大することや45°方向粗さの場合の寿命が短いこと,高硬さ円筒を低速側にしたときのき裂発生が接線力による引張り応力に起因することなど新しい知見が得られた.これらについては「トライボロジー会議'96東京」で発表する予定である.
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