研究概要 |
航空機を含む流体機械の高性能化には,表面境界層を制御して流体抵抗,流体騒音を低減することが必要である.本研究課題は,そのような応用研究を視野に入れた基礎研究である.2年計画の研究のうち,今年度は主として一様表面粗さを用いた実験研究を行った.流体(乱流)抵抗を精度良く(測定精度1g)測定できる実験装置を設計・製作し,滑面,リブレットおよび複数の微小表面粗さを用いて,流体抵抗や境界層速度分布などの詳細な測定を行ない,滑面との比較検討を行った.その結果リブレット表面で約5%の抵抗軽減が確認され,また9μmの微小表面粗さでもおよそ1%程度の抵抗軽減(レイノルズ数10^6の領域において)が確認できた.これまでリブレットなど微小な縦溝構造を有する表面では流体抵抗軽減が確認(本研究課題でも確認済み)されており,かつその軽減のメカニズムも縦溝構造を前提にして説明されているが,一様な粗さでの抵抗軽減が確認されたのは初めてであり大きな成果であると自負している.しかし,そうなると新たな抵抗軽減のメカニズムの解明が必要となるが,現在のところ仮説の域を出ないものの,下記のような新たな抵抗軽減メカニズムを提唱した.すなわち,“リブレットも含め微小表面粗さの平均高さ内に存在する空間の大きさが重要なファクターであり,この空間内に低エネルギー流体が滞留し,境界層壁面近傍の激しい渦運動に巻き込まれ,高エネルギー流体に晒されないことが乱流エネルギー発生を抑制している"のではないかということである.
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