研究概要 |
次世代旅客機のコンセプトを実現するためにには,表面境界層を制御して流体抵抗,流体騒音を低減することが必須である.又,流体機械一般,エネルギー変換機器等の高効率化環境親和化(環境に馴染むようにすること)を行う上でも三次元境界層の制御は重要な研究分野である.本研究課題は,そのような応用研究を視野に入れた基礎研究である.2年計画の内,初年度は主として一様表面粗さを用い乱流状態の境界層を制御して抵抗の低い状態を実現する実験研究を行った.その目的で,極めて精度の良い測定装置を設計製作し,集中的に測定を行った結果,9μmの微少表面粗さに於いておよそ1%の抵抗軽減が確認できた.リブレットによる抵抗軽減のメカニズムは,これ迄縦溝構造を前提に説明が成されてきているが,一様粗さによる抵抗軽減が確認された今,別の抵抗軽減メカニズムを提唱している.即ち,“リブレットも含め微少表面粗さの空間が重要なファクターであり,この空間に低エネルギー流体が滞留し,境界層壁面近傍の激しい渦運度に巻き込まれて高エネルギー流体にさらされにくくなることが乱流エネルギー発生を抑制している"のではないか,ということである. 2年目には,初年度の研究の課程で見つけた現象,一様粗さ表面による乱流遷移の遅れについて主として研究を行っている.即ち,トリップワイヤーにて強制乱流した特殊な乱流境界層に於いて滑面に比べて乱流遷移が遅れることは報告されているが,本研究のような状態での遷移の遅れが検出されたのは初めてである.パイプ内の流れに於いて大幅な抵抗軽減が報告されているが,これは乱流境界層状態での現象ではなく,恐らく本実験結果と同じように,乱流遷移が遅れた結果生じたものと思われる.
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