研究概要 |
低マッハ数域での空力音解析を中心に研究を進めた.対象とする流場の一つである単独翼から発生する空力音場の解析のためには,精度のよい流れ場の瞬時データが必要となることから,ここではLES(Large Eddy Simulation)により数値シュミュレーションを行った.その結果,作成した計算コードにより,翼後縁から流出するカルマン渦の挙動が十分な解像度で捉えられることを確認した. 続いて,古典音場理論に基いたLighthill-Curleの式により,翼回りの音場解析を行い,音源分布,翼周辺の音場の時間変化・空間特性を調べた.その結果,二重極特性を示す音場の放射指向性,ならびに音源分布とカルマン渦の流出周期の関連について妥当な結果を得た.これら古典音場理論解析コードの整備により高精度音場解析コード作成後の結果に対する比較検証が可能となった. さらに,低マッハ数域では音響成分と流れ場の空間スケールが大きく食い違うことから通常の圧縮性コードにより音場と流れ場を統一して解くことは不可能である.それを解決するための分離解法がHardinら(1995)により示された.本研究ではさらにこのスキームを一般座標系に拡張し,単独翼回りに適用した.その結果,翼近傍での音場の様子から,翼近傍では古典音場理論による解と大局的な構造は類似するもののその微細な空間構造にかなりの違いを示した.この結果は物理的な視点に基づく音場の領域分割の指標となり,低マッハ数域での領域分割スキームを構成した高効率音場解析手法の検討が可能となった. また,円形噴流については,遠方での周囲流体の巻き込み(Entreinment)条件を考慮した時間発展スキームの開発を行っているが,そのスキームの高精度化のために梶島による対流保存型スキームの一般座標への適用を行い,精度確認を行った.
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