1.ふく射・対流共存伝熱問題における負荷逆問題に関し、特異値分解法を用いた解法を開発し、その例題として、2次元の加熱炉を模擬した系内に置かれた被加熱物の周囲に、均一熱流束を与えるのに必要なヒ-タの発熱量分布を求めた。 2.ふく射伝熱物性値逆問題としては、系を囲む固体壁に沿った温度・熱流束分布と、系内のガスの温度分布を与えて、系内のガスの吸収係数分布を求める手法を開発した。この解法では、最初に適当に仮定した系内の吸収係数分布を用いて、ふく射伝熱の順問題をモンテカルロ法によって解き、ガス温度と壁面温度の分布から、この吸収係数分布に対応した壁面熱流束分布を求める。この熱流束分布と、最初に逆問題の入力として与えらえた熱流束分布の差が0となるように、仮定した吸収係数分布を修正して上記の過程を繰り返すことで、入力条件に対応した吸収係数分布を求める物である。この吸収係数分布の最適化のため、エネルギー式を吸収係数に関して近似的に線形化し、入力として与えられた壁面熱流束を満足する吸収係数の組を求める手法を提案した。また、この吸収係数の収束過程で、モンテカルロ法による順問題解法を繰り返し実行することによる計算時間の長大化を防ぐため、各要素間のふく射エネルギー交換を表すREAD値を、吸収係数の非依存部と依存部に分割し、モンテカルロ法によって計算する必要のある前者を収束ループの外側に出す手法を開発した。これらの手法を組み合わせることで多次元系でのふく射伝熱物性値逆問題の解法を開発することができた。 本研究では、この手法の妥当性検討のために、吸収係数分布の分かった2次元系でのふく射伝熱順問題をまず解いて、ガス温度、壁面温度および壁面熱流束を求め、これらから、逆に上記の手法を用いて最初に与えられた吸収係数分布を推定できるかどうかを調べた。この結果、本手法が2次元系に十分適用可能であることが確認された。
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