研究概要 |
本研究では,回転場における乱流熱伝達を支配する乱流構造を明らかにするために,平滑管およびリブ付き管の実験結果を基礎データとして,乱流の直接数値シミュレーションを行い,コリオリカ,遠心加速度場における浮力,そしてリブが矩形管内の乱流構造に及ぼす影響を詳細に把握することを目的とする.以下に実験および数値解析で得られた結果についてそれぞれ説明する. 矩形往復流路および正方形直管流路それぞれのテストセクションを用いた平滑管およびリブ付き管の実験を行った.正方形直管流路については,周方向への局所熱伝達率分布を計測でき,回転,リブの付加,および主流の向きによる熱伝達率分布の変化の様子を定量的に捕らえることができた.また矩形往復流路の場合には,リブ間で極大値をとる熱伝達率分布が周期的に繰り返される様子および曲がり部で平滑管に比べ熱伝達率が減少する様子が観察された.リブを主流に対して傾けると流路平均熱伝達率の上昇が計測された.往復流路では傾きを45度から90度まで変化させ,60度の場合に流路平均熱伝達率が最大値をとった. 数値解析では、乱流モデルの影響が少ないLESを導入し差分法を用いてRe_τ=350での平滑正方形管の解析を行った.従来の回転場における乱流計算はReynolds平均によるものかまたは2次元チャンネルの様な2方向に周期境界条件を適用できる場に限られていた.今回の計算はLESではあるが,変動GS成分はSGS成分に比べ応力の大部分を占めており,矩形管内乱流熱伝達の数値解析としては他に類を見ないものである.静止場および回転場の数値解析結果は平滑直管の実験と概ね良好な定量的一致を示した.今回の計算は東大大型計算機センターのS3800を用いベクトル化率100%,ベクトルジョブ率90%以上という高度にベクトル機用に調整されたプログラムを作成し計算を行ったがそれでも統計量を得るためのCPU時間は3時間を超える場合があり,今後リブ付き管および曲がり部を含む数値解析を行う上では,並列手法を用いた計算の高速化とLES等の経験定数の影響の小さいモデルの導入が不可欠である.
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