研究概要 |
本研究においては,まずメタン空気の対向流拡散火炎,対向流二重火炎及び一次元予混合火炎を対象として,詳細な化学反応機構を考慮した数値計算を行った.そして,計算結果から単位火炎面面積当りの各素反応の反応速度に基づいた定量的な反応経路図を作成し,火炎中におけるNO_xの生成過程を詳細に調べた.その結果,予混合火炎(希薄・過濃)・拡散火炎・二重火炎(速度勾配小・速度勾配大)の各場合でThermal機構・Fenimore機構・HCNリサイクル経路の相対的な重要性が異なることが分かった。続いてEmission Indexに対する感度解析によって個々の素反応の寄与を評価し,NOの生成において支配的な役割を果たす素反応を調べた.その結果,Thermal機構の開始反応・Fenimore機構の開始反応・HCNリサイクル経路の開始反応の3つの反応が一般に重要であり,それらの相対的な重要性は上に述べた火炎の種類や条件によって大きく異なることが分かった.更に,軸対称の同軸流拡散火炎の二次元数値計算も行い,火炎面上の任意の位置における(火炎面に垂直方向の)火炎構造を同じ代表拡散時間を有する対向流拡散火炎と比較すると,非常によい一致がみられることが明らかになった. 一方,実験においてはPLIF法(平面レーザ誘起蛍光法)によって火炎中のNO濃度を光学的に測定した.これは,計算で使用する化学反応機構の有効性を確認することを目的とする.但しこの場合,対象を対向流拡散火炎から同軸流拡散火炎に変更した.これは,対向流火炎の場合は火炎中でのレーザー光の光路が非常に長いために吸収が多く,正確な濃度測定が困難だからである.実験結果と前述の二次元数値計算との濃度分布の比較すると,火炎面付近から下流にかけては数値計算とのよい一致が得られたが,噴射管出口付近の燃料側領域において両者の差異がやや大きく,数値計算に用いた化学反応機構について細かく検証するためには若干の問題点が残った.
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