石炭を高温で利用するための基礎的研究を、着火、反応性、炭粒内の灰の溶融挙動、溶融しているスラグに接する炭粒のガス化挙動、灰組成の化学変化などについて、実験的研究を行い、これらの現象が石炭の有するマセラル(微細組織)とどのように関連しているかについて検討し従来炭種や燃料比によって分類していたものに石炭のマセラルを指標とする分類を加えることが出来ることを明らかにした。研究結果を要約すると、以下のようである。 1. マセラルを分離した実験を行った結果、ビトリナイト含有量が高い石炭ほど着火温度が低くなる。 2. マセラル組成によって燃焼過程中の粒子内構造が変化し、それが着火温度に影響する。網目状チャー構造を呈する石炭ほど低温で着火する。 3. 溶融スラグにに接している石炭粒子の反応性は、反応雰囲気によって大きく影響される。これは、石炭粒子内の灰の成長とその構造に強く影響される。特に還元性雰囲気では、溶融スラグと炭粒内溶融スラグが架橋し、石炭粒子を細分化してスラグ層内に分散させ、ガス化反応を加速する。 4. 高温において、金属化合物の灰から蒸発する速度を求めるために、純粋な化学物質とそれに石炭灰を混合したものについて測定し、蒸発速度に及ぼす灰の影響を検討した。灰分の存在により、多くの化学種の蒸発温度は低下する。種々の化学種について蒸発速度を定量化し、数式表示した。 5. 特に燃焼ガスでガスタービンを駆動する場合に問題となるアルカリ金属の蒸発挙動について検討し、蒸発速度を定量的に計算できるよう、数式化した。
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