本年度は超伝導パワーデバイスに関する研究の1つの柱である磁気遮蔽型超伝導限流器の高性能化を目指して、超伝導限流素子、試験用電力回路、データ収録・解析装置等の実験設備およびコンピュータ制御プログラムを整備して実験および理論解析を行った。 当初の計画に基づいて、超伝導円筒遮蔽体に円周方向に巻線したトロイド状制御コイルを用いて臨界電流密度等の超伝導特性を制御する研究を行い、同コイルに50Hzないし1kHzの交流電流を印加して円筒内部への磁束侵入の動的挙動を試験評価したところ、周波数を1kHzに高めると磁束流抵抗の増加によると思われる現象によって限流インピーダンスがかなり増加するという知見を得た。これについて、超伝導円筒の磁束流抵抗や円筒内部への侵入磁束量等を考慮したモデルを構築してシミュレーション解析を行った結果、その改善は主に磁束流抵抗の増加によることを明らかにした。 以上の研究の過程で、超伝導体内を流れる遮蔽電流を外部的に制御できる「補償コイル」を用いれば磁束侵入が加速でき限流インピーダンスの向上が図れるのではないかという着想を得た。この仮説に基づき試験回路を改造して実験を行い期待どおりの良い結果を得た。当初、制御コイルとこの補償コイルを直列に接続したが、実験を重ねて補償コイル単独でも同様の結果を得ることを明らかにした。これについて等価モデルを考察しシミュレーションによる解析を試み、ほぼ実験結果が説明できるようになった。 8年度ではシミュレーションモデルの高度化および限流特性の最適制御条件を明らかにするとともに、これらの成果を「磁束スイッチング」の概念に基づく超伝導パワーデバイスの研究へ適用する。
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