本年度は超伝導体の磁気遮蔽機能を利用した高温超伝導限流器及び、超伝導パワーデバイス開発の基礎となる磁束スイッチング特性の研究をおこなった。 前者に関して、超伝導磁気遮蔽体円筒にトロイダル状に巻回した制御コイルに電流源より数kH_2程度の交流電流を印加して、超伝導特性を制御するアクテイブ制御方式を提案し、それを適用して限流器を試作して諸特性の実験及び解析を行った。その結果、これまで困難であった超伝導体における磁束流抵抗を著しい増大が可能となり、限流器の重要な性能である高限流インピーダンス特性が実現できる見通しを得るとともに、特性シミュレーション法の開発を行った。また、周波数を増すとさらにインピーダンスが向上できることも示した。従来、磁束流抵抗は直流電流(磁界)の下でのみ研究され、温度あるいは磁界を操作することでしか磁束流抵抗の制御はできないと考えられてきたが、この知見は交流電流(磁界)の下では異なることを示すものである。この原因は現在明らかでないが、今後引続きその解明に注力しより高性能な制御方式を開発する。また、実用規模の限流器でその効果を実証し限流器の技術的基盤を確立したい。 超伝導パワーデバイスについて、高透磁率磁気回路と薄膜超伝導体を組み合わせる独自方式を考案した。薄膜はイットリウム系超伝導体で厚さが約0.5μmで、臨界電流密度は数10万A/cm^2以上の良好な特性を有している。本年度は薄膜超伝導体の超伝導-常伝導間転移は非常に高速であることを明らかにし、本特性を利用して高透磁率磁気回路の磁束がスイッチングできる見通しを得た。今後、これらの知見を活用して商用周波数のパワースイッチングデバイスの開発を行う計画である。
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