電力会社が電力供給の信頼性を犠牲にせずに経済性を向上させていくための大切な技術として、発電所の起動停止問題(ユニットコミットメント)がある。しかし、実際の系統に含まれる発電所の数が多いこともあり、対象とする期間が長くなると最適解を探索することは容易でなくなってしまう。これまで最も有望とされてきたラグランジュ緩和法を用いても、長期間にわたる制約(燃料の使用総量制約など)が含まれる場合には求解が困難である。 本研究では、長期間にわたる制約(特に燃料使用量制約)に着目し、そのような制約を含む実規模系統のユニットコミットメントを決定できるアルゴリズムの開発をおこなった。その際、通常の手法とは発送を転換し、先に燃料消費量制約を満たす可能性の高い解候補を各時間帯ごとに求め、それを組み合わせるという手法を考案した。 この手法では、如何に効率の良い解候補を作成できるかが重要なポイントとなる。ここでは、従来から用いられており計算量の割に良解を求められることで知られる優先順位法をベースとして、燃料消費量の大小によって補正を加えて解候補を作成する手法を開発した。また、作成した解候補を組み合わせて最適解(または準最適解)を求める手法としては、遺伝的アルゴリズムをベースとした手法を用いた。 そして、開発した手法を発電機数5機、期間10期間のモデル、10機20期間のモデルおよび20機24期間のモデルを用いて検証した。その結果、従来からの優先順位法(本手法のように遺伝的アルゴリズムと組み合わせないもの)、単純な遺伝的アルゴリズム(優先順位法などと組み合わせないもの)、およびラグランジュ緩和法と比較してより良い解を求めることができ、本手法が有効であることが明らかになった。
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