本年度は、年間の湿度変化を踏まえた上で自然状態において絶対湿度3〜20mg/m^3の条件下で実験を実施した。試料として、ピンがいし、ステーションポストがいし、ラインポストがいし、長幹がいし、高分子がいしの5種類の実がいしを用いた。交流電圧、雷インパルス電圧(正極性および負極性、開閉インパルス電圧(正極性、負極性)を試料に印加し、フラッシオーバ電圧の絶対湿度依存性を評価した。一方、近年欧米で台頭著しい高分子がいしについては、フラッシオーバ電圧に影響を及ぼすと考えられる表面の撥水性に関する基礎実験も実施した。得られた結果を以下に示す。 1.3年間の湿度実測データを解析した結果、絶対湿度は年間では冬期に最小値3mg/m^3程度、夏期に最大値20mg/m^3程度を示し、その間は緩やかに変化することがわかった。この結果を参考にして、所望の絶対湿度の時期に実験を実施した。 2.配電用ピンがいしに正・負雷インパルス電圧を印加した場合には、フラッシオーバ電圧は絶対湿度の上昇とともに低下することが確認された。現行のIEC(国際電気標準会議)規格の湿度係数に修正が必要と考えられる。 3.それ以外の場合には、フラッシオーバ電圧は絶対湿度とともに上昇した。現行のIEC湿度係数はほぼ妥当と考えられる。 高分子がいしに使用されるシリコーンゴムを繰返し水に浸漬すると、撥水性は徐々に低下し、乾燥時に重さもわずかに減少した。 シリコーンゴム上の水滴は、交流高電界により形状が変化したり、水滴同士が結合したりすることが確認された。
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