本研究は、超伝導電力用機器に用いる大電流大型導体の最適設計法の確立に資する学術的知見を得ることを目的とする。特に、損失や電流分布などの電磁特性と、応用歪特性などの機械特性とが相互に作用し合うという、「電磁機械結合効果」とでも呼ぶべき新しい視点に立って、導体の基礎特性を検討する。その際、申請者の開発した大型超伝導導体の「損失測定装置」や「損失解析コード」などを駆使して、実規模導体を用いた実験と理論的な解析を行い、導体特性の格段の向上を目指そうとするものである。 現有している大型超伝導導体の「横磁界中損失測定装置」では、試料導体に通電できないので、まず20〜30kAの大電流直流電源の機能をもつ超伝導大電流トランスを設計・製作した。これを、新しく製作したより大型のスプリット型超伝導マグネットやFRPデュワ等の設備と組み合わて、新たに「通電時損失測定装置」を完成させた。この新しい測定装置では、最大40mm角断面で約1.2m長の実規模導体の短尺試料に20〜30kA級の大電流を通電でき、2〜3テスラ程度のバイアス磁界をかけることができる。その結果70トン程度の電磁力が印加できることになる。この状態でさらに、0.05〜400Hzの微小交流磁界を印加して、交流損失が測定できる。現在試作されている代表的な超伝導導体は、(1)大型直流コイル用の浸漬冷却型安定化導体、(2)パルスコイル用の強制冷却型ケーブル・イン・コンジット型導体、(3)高電流密度コイル用のラザフォードケーブル型導体、に大別できる。これらの導体のうち特に、(2)について、新しい「通電時損失測定装置」を用いて損失特性の電磁力依存性を測定した。その結果、0.4MPa程度の電磁応力の印加によって、当初の予測通り素線間結合損失が数10%増大することが明かになった。また、導体内部で局所的な機械振動が観察された。さらに、(3)について同様の検討を行った。
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