研究概要 |
本研究は,超伝導電力用機器に用いる大電流大型導体の最適設計法の確立に資する学術的知見を得ることを目的とする。特に,損失や電流分布などの電磁特性と,応力歪特性などの機械特性とが相互に作用し合うという,「電磁機械結合効果」とでも呼ぶべき新しい視点に立って,導体の基礎特性を検討する。その際,申請者らの開発した大型超伝導導体の「損失測定装置」や「損失解析コード」などを駆使して,実規模導体を用いた実験と理論的な解析を行い,導体特性の格段の向上を目指そうとするものである。 本年度は,昨年度製作した「通電時損失測定装置」を用いて,パルスコイル用強制冷却型のケーブル・イン・コンジット実規模導体の損失特性について,より強い電磁応力下での測定を行った。その結果,0.9MPa程度までの電磁応力の範囲においては,電磁応力の増加に伴い,素線間結合損失が増加することが明らかになった。本年度は,さらにこの損失の増加が純粋に電磁力だけによるのか,それとも導体内の電流分布にも関連しているのか,という点を明確にするために,通電電流とバイアス磁界の組合せを変えて,同じ電磁力で通電電流が異なる条件での損失測定も行った。その結果,同じ電磁力でも通電電流により損失値が異なる結果が得られ,損失の増加に電流分布も関連していることがわかった。また,実規模導体の電流分布についても,強い電磁力を受けた状態での測定を行った。この測定より,導体内の電流分布は局所的には一様でなく,導体の長手方向で変化しているという結果が得られた。 一方,高電流密度コイル用のラザフォードケーブルについて,応力を受けた場合の導体の損失特性の変化について,有限要素法による解析コードを開発し,印加される応力とストランド表面の接触抵抗及びストランドの変形とを関連づけて,定量的な検討を行った。
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