ナノスケール量子細線の構造制御と一次元励起子の光学特性

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07455131
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 榊 裕之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90013226)
• 研究分担者: 秋山 英文 東京大学, 物性研究所, 助教授 (40251491) ; 野田 武司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (90251462) ; 高橋 琢二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (20222086)
• キーワード: 量子細線 / 一次元状態 / 振動子強度 / 空間分解フォトルミネセンス / 横方向閉じ込め / フォトルミネセンス励起スペクトル / T型量子細線 / 一次元励起子

研究概要

本研究では、高品質なナノメートル寸法の量子細線を作製することによって、優れた量子細線の光学特性を実現し、それらを半導体レーザや光変調器などの光デバイスに活用する可能性を探ることを目的としている。量子細線において、安定な一次元状態を実現したり、一次元状態の特異な光物性を顕在化させるためには、横方向閉じ込めを強くする必要がある。筆者らは、昨年度の研究において、量子細線の寸法を小さくすると同時に、バリアの高さを高くすることによって、T型量子細線において強い横方向閉じ込めを実現してきた。実際に、AlAsをバリアにした5nm寸法のT型量子細線では、一次元の安定化エネルギー(T型量子細線と量子井戸のエネルギー差)が38meVにまで達することを確認した。しかし、T型量子細線の光デバイス応用を考える上では、バリア層にAlAsを用いるのは好ましくない。そこで、筆者らは、AlAsをバリア層に用いるのを避け、AlGaAsバリアのT型InGaAs量子細線を作製した。T型InGaAs量子細線の空間分解フォトルミネッセンス・スペクトルを4Kで測定した結果、一次元の安定化エネルギーは34meVという大きな値を実現できたことが確かめられた。
さらに、筆者らは、振動子強度を調べる目的で、横方向閉じ込めが系統的に変化した3つのT型量子細線について、フォトルミネセンス励起(PLE)スペクトルを測定した。T型量子細線のPLE強度を試料間で比較することにより、一次元励起子の吸収面積強度を見積もった。その結果、横方向閉じ込めが増すに従って、振動子強度が一次元励起子に集中することを見出した。

研究成果

• [文献書誌] T.Someya,H.Akiyama,and H.Sakaki: "Enhanced binding energy of one-dimensional excitons in quantum wires" Physical Review Letters. 76. 2965-2968 (1996)
• [文献書誌] H.Akiyama,T.Someya,and H.Sakaki: "Optical anisotropy in 5-nm-scale T-shaped GaAs quantum wires fabricated by cleaved edge overgrowth method" Physical Review B. 53. R4229-R4232 (1996)
• [文献書誌] H.Akiyama,T.Someya,and H.Sakaki: "Dimensional crossover and confinement-induced optical anisotropy in GaAs T-Shaped quantum wires" Physical Review B. 53. 10520-10523 (1996)
• [文献書誌] T.Someya,H.Akiyama,and H.Sakaki: "Molecular beam epitaxial growth of In0.15Ga0.85As quantum wells on GaAs(110)surfaces" Japanese Journal of Applied Physics. 35. 2544-2547 (1996)
• [文献書誌] H.Akiyama,T.Someya,and H.Sakaki: "Microscopic photoluminescence spectroscopy of 5-nm-scale T-shaped quantum wires fabricated by cleaved edge overgrowth method" Technical Digest Series. 9. (1996)
• [文献書誌] H.Akiyama,T.Someya,and H.Sakaki: "Concentrated oscillator strength of one-dimensional excitons in quantum wires observed with photoluminescence excitation spectroscopy" Physical Review B. 53. R16160-R16163 (1996)