研究概要 |
本研究では、高周波スパッタリング法によるTa205薄膜の成膜時に弾性表面波を用いる“薄膜胎教形成法"を提案し、膜厚と屈折率の周期的変化を制御する実験的検討を行った。本年度の研究によって得られた成果は以下の通りである。 1.薄膜胎教形成法の確立:スパッタリング法による薄膜作成時にあらかじめ弾性表面波定在波を励起しておくと、光弾性定数,膜厚.屈折率などの物性が大きくなる。 2.弾性表面波定在波により、薄膜位相格子が容易に形成できる。膜厚の変化は約1.78%,屈折率変化は約12.5%と非常に大きい。 3.成長メカニズムの提案:弾性表面波が有する外部電界によって基板表面の誘電率が定在波の周期で変化し、それによって分子の付着力に違いが生じ,結果として膜厚と屈折率に空間的変化が生ずる.このことを薄膜成長理論を基に理論的に解明し、提案した。 4.二次元位相格子への応用:直交する弾性表面波定在波を用いて、2次元位相格子の作成をおこなった。非常に正確に配置されたドットが形成され、理想的な格子が容易に形成できることを示した。 本研究で提案した弾性波によって材料をあらかじめ“胎教"し、物性(ここでは光学定数)を大幅に変化させる現象は、無機材料の成長においてこれまで全く報告されていない。また、弾性表面波定在波によって膜厚と屈折率が変化する“薄膜位相格子"が作成される現象もこの世界で初めて確認されたものである。本形成法は、他の材料にも応用可能であり、無機材料の成長メカニズムの解明と工学的応用が大きく期待される。
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