研究概要 |
Bi_2Sr_2Ca_<n-1>Cu_nO_xの中でも特にn=3の相(Bi2223相)は100K以上の臨界温度を有する酸化物超伝導体で,この材料を用いれば,現在主流のY系超伝導体デバイスに比べ,動作安定度・性能の面で優れたデバイスの実現が期待できる。本年度はBi2223相の薄膜化技術をもとに,基板段差を利用した段差型接合,およびバイクリスタル接合を用いたSQUIDの作製を試みた。得られた知見を以下に示す。 1.段差型接合: MgO基板に段差を形成した後,Bi2223相薄膜を製膜して段差型粒界接合を作製し,その特性を評価した。電流-電圧特性はRSJ的であり,超伝導電流は外部磁場に対して変調することからジョセフソン電流であることが確認された。段差の上部(凸部)および下部(凹部)でそれぞれ粒界ができていることが示唆された。接合特性の改善のために,短時間の熱処理を行った薄膜で接合を作製したところ,接合の臨界温度,臨界電流およびI_cR_n積の向上が見られた。また,粒界部に形成された絶縁層近傍には常伝導相が存在している可能性が考えられた。 2.バイクリスタル接合を用いたSQUID: バイクリスタル接合を用いた超伝導量子干渉素子(SQUID)を試作し,その動作特性を調べた。その結果,ノイズ特性の評価までには至らなかったものの,外部磁場に対する臨界電流の周期的な応答を確認した。また,変調度は小さいものの,高い微分抵抗を反映して比較的大きな出力電圧が得られた。
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