モノシラン(SiH_4)を用いた減圧CVD法によって、成長温度525〜650°Cの範囲で、シリコン熱酸化膜(SiO_2)上にナノメートルサイズのSiドットを形成し、そのサイズ分布と面密度を原子間力顕微鏡(AFM)及び透過電子顕微鏡(TEM)により評価した。その結果、基板面内方向(ドット直径)及び垂直方向(ドット高さ)の成長には、それぞれSi結晶核上でのSiH_4の熱分解反応及び化学吸着した前躯体の凝集作用が律速過程である事を明らかにした。また、Si核発生には、SiO_2表面における化学結合の熱解離が極めて重要である事を見出した。さらに、希HF処理によってOH終端したSiO_2表面では、核発生密度が、顕著に増大することを明らかにすると共に、結晶核密度の増大によって、平均ドットサイズが小さい、狭いサイズ分布が得られることを示した。Siドット(高さ約3nm)を厚さ1nmのSiO_2膜で挟んだ二重障壁構造を作成し、導電性AFMプローブを用いて、孤立したSi電子ドットを介した電流-電圧特性を調べた結果、共鳴トンネル伝導に起因すると考えられる負性コンダクタンス特性が、室温で明瞭に観測された。さらに、表面を薄い熱酸化膜で覆ったSiドットにおいて、可視域(発光ピークエネルギー1.5eV)に室温で高効率なフォトルミネッセンスを確認した。励起エネルギー2.54eVおよび3.81eVのそれぞれにおいて、発光スペクトルのピーク位置とスペクトル形状に大きな変化は認められないことから、この試料では主として光学バンドギャップ2.54eV以下のSiドットが、この発光に寄与していることが示唆された。
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