従来、アクチュエータとしてモータ、ピエゾアクチュエータが多く使われてきた。最近では形状記憶合金、静電マイクロモータ、高分子ゲルなど様々な原理、材料によるアクチュエータが数多く研究されるようになってきた。いずれも、新しいニーズを狙ったもので、中でも将来、医療機器や人工器官、特に人工筋肉としての応用の可能性がある。本研究で取り扱う導電性高分子の電解伸縮は、電気化学的な酸化と還元によって伸び縮みする現象である。特に、ピエゾ素子に比べ、低い駆動電圧で大きくしかも柔軟に伸縮する点に特徴がある。 電解伸縮機構を明らかにするために、伸縮率の異方性、ドープ量依存性、ドーパントの種類依存性、過度応答などを、総括的な実験により調べた。特に、伸縮の直接測定によって、伸縮率は筋肉の10分の1の約3%であるが力は筋肉の10倍以上発揮できることを明らかにした。これらの電解伸縮のメカニズムを説明するために2、3のモデルを提唱した。一つは、イオン半径の大きいドーパントほど大きい伸縮率が得られることから、嵩高いドーパントイオンによる伸縮である。しかし、それだけでは実験事実をすべて説明できないことから、ポリカチオンによる静電反発、あるいはヘリカル構造から剛直ロッド構造へのコンフォメーション変化の関与である。また、電解伸縮の逆の現象として、機械的な力で変形させることによって、電流が誘起される現象を見い出した。このような機構の解明によって、将来、生体筋肉以上の機能を得ることも可能である。
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