本年度は、多素子電力合成型固体発振器を構成するガンダイオード及びトランジスタ(HEMT)と共振器の個々のミリ波帯での特性を明らかにし、発振器設計を行うことが主な課題であった。以下に現在までの研究結果について述べる。 1.HEMT素子を用いた金属格子鏡型発振器 (1)HEMTチップのミリ波帯でのSパラメータの決定。 2GHz〜60GHzまでのミリ波帯において、マイクロストリップ回路を用いたLine-Reflet-Line(LRL)法によりHEMTチップのSパラメータの測定に成功した。この測定において、HEMTチップの回路への装着は、本年度設備したワイヤーボンダーを用いて行った。 (2)金属格子鏡へのHEMTチップ装着法の開発。 本研究では、2次元アレイ化した多数個(〜100個)のHEMTチップを安定にかつ設計した回路インピーダンス通りに金属格子鏡に装着・配線するため、50μm程度の薄い金属薄板(金メッキ付き隣青銅板)にホトリソグラフィの技術を用いてインピーダンス整合回路を作り込み、その上にチップを装着・配線する方法を考案し、その加工技術を確立した。 (3)金属格子鏡型ファブリ・ペロ-共振器の等価回路の製作 HEMT素子へのバイアス回路を含むファブリ・ペロ-共振器の等価回路を製作し、実験との照合を通して、その回路の正当性を実証した。 2.60GHz帯ガンダイオード発振器 (1)40GHz〜60GHzの周波数領域で、ガンダイオードの動作インピーダンスの測定に成功した。 (2)ホーンアンテナ結合型ファブリ・ペロ-共振器を新たに提案し、60GHz帯で9個のガンダイオードのコヒーレントな電力合成に成功し、周波数54.4GHzで最大275mWを得た。
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