本研究は、実用的な出力パワーを持つミリ波帯固体発振器の開発を目的とし、準光学的な回路技術を用い、多数個の固体素子からの電力をコヒーレントに合成する準光学的電力合成型発振器設計の基礎データを得るために行われた。 1.金属格子鏡型ファブリ・ペロ-共振器の基本特性を10GHz〜60GHz帯で調べ、そのインピーダンス特性を明らかにした。その結果に基づき、発振器設計に必要不可欠な等価回路を理論的に求め、その正当性を10GHz帯で実験的に確認した。同時に、10GHz帯でのHEMT9個によるコヒーレントな電力合成実験に成功した。次に、多数個のHEMT素子を金属格子鏡に均一な装着するため、空間と素子との整合回路をホトリソグラフィの技術を用いて一括して製作する方式を新たに開発した。 2.共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いた金属格子鏡型発振器製作を進め、RTD2素子を用いた70GHz帯でのコヒーレントな電力合成実験に成功し、本発振器が短ミリ波帯で有望な発振器であることを示した。 3.高効率な少数素子アレイ用共振器として開発したホーンアンテナ結合型ファブリ・ペロ-共振器に、9個のガンダイオードを装着し、60GHz帯で最大出力430mWの発振出力を得た。 4.準光学的電力合成型発振器用出力カプラーとして、高可変率と広帯域特性を合わせエバネッセント波結合型金属メッシュカプラー及び光制御型の高速変調機能のついた金属ストリップグレーティングを用いたシリコンファブリ・ペロ-型カプラを提案し、その有用性をミリ波帯で実験的に示した。
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