研究概要 |
LSIの開発においては、半経験的なモデルによる現在の半導体プロセスシミュレーションに代わり、普遍的な物理モデルに基づいたシミュレーションの構築が必須の課題である。本研究では、点欠陥に基づいた不純物拡散のプロセスシミュレーションの構築のため、空格子点や格子間原子などの点欠陥の様々な物理定数を実験的に決定し、これにより拡張性のあるプロセスモデルを確立し、そのシミュレーションへの適用を目的とする。平成8年度では、シリコン基板上にシリコン窒化膜(Si_3N_4)堆積させた構造を高温熱処理するとシリコン基板が圧縮歪みを受け、空格子点を発生させることを用いて、空格子点の拡散係数の決定を試みた。シリコン表面に不純物(ボロン)をイオン注入により導入し、他方シリコン裏面にSi_3N_4膜を堆積させた構造の試料を作製し、高温熱処理で裏面から空格子点を発生させ、基板を拡散した空格子点が表面層のボロン拡散に及ぼす変化を調べ、適切な境界条件のもとで拡散方程式を解き、実験値とのフィティングから空格子点の拡散係数を決定した。この際境界条件は、表面に導入したボロン層に直接Si_3N_4膜を堆積させた構造の試料を別途用意し、熱処理によるボロン拡散の減速割合から空格子点の発生量を実験的に求めたものを用いた。このようにして、空格子点の拡散係数D_Vおよび反応係数k_Vを同時に求めることができ、1000℃における値は、D_V=4.1x110^<-9>cm^2/s,k_V=8.9x10^<-10>cm/sであった。
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