研究概要 |
LSIプロセス技術のなかで、ドーパント拡散の制御は、その濃度分布がデバイスシミュレーションの入力データとなるため殊に重要である。ドーパントの拡散は、空格子点や格子間原子などの点欠陥を介して行われるので、点欠陥の挙動を明かにすることが必要となる。本研究では、このような観点から、Si基板において表面から導入した点欠陥がB,P、Sbなどのドーパント拡散に及ぼす影響、点欠陥と積層欠陥との相互作用、導入した点欠陥の拡散係数の決定、あるいはドーパントの拡散機構の解明などを明らかにすることを目的とした。 はじめに、Si_3N_4膜を堆積させたSi基板構造において、熱処理によりSi_3N_4膜中に発生する応力を走査レーザー法により評価した。膜中には伸張応力が、またSi基板表面には圧縮応力が発生する。続いて、Si_3N_4膜下のSi基板中のドーパント拡散および積層欠陥との相互作用を調べた。BおよびPは減速拡散を示し、一方、Sbは増速拡散を示し、また積層欠陥が消滅することが明らかとなった。さらに、陽電子ビーム消滅法により、圧縮応力を受けたSi基板には、過剰な空格子点が存在することを確認した。従って以上の結果は、熱処理中にSi_3N_4膜下のSi基板表面から導入された過剰な空格子点が、格子間原子と再結合し、格子間原子濃度の不飽和を生じさせ、このため上記の結果が得られたと言える。また、B,P、Sbの拡散において、格子間原子が拡散機能において関与する割合(f_1)を決定した。Bでは1、Pでは0.96、Sbでは0であった。
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