研究概要 |
本年度は高誘電率材料を用いた斜め配向膜の作製条件探求と針状膜成長のメカニズム解明を中心に研究を進めた。高誘電率かつ光通信用波長域で透明な材料としてシリコンを選んだ。この針状斜め配向膜が実現すれば,理論的には自然界に存在するルチルや方解石などを用いた場合に比べて5倍以上の偏光分離性能が期待できる。 これまでの申請らの研究により、針状膜を真空蒸着法により作製するには成膜中の真空度を下げることが有効であることが分かっている。そこでアルゴンガスを導入し,0.2mtorrの圧力下でシリコンの成膜を行った。蒸着方向は基板垂直方向から50,60,70度の3種に変化させた。膜断面を電子顕微鏡で観察した結果,蒸着粒子の入射角のほぼ半分の角度に斜め配向したシリコン膜を作製することができた。また,真空蒸着法と並行して,高周波スパッタ法によるシリコンの斜めスパッタ成膜実験を行った。その結果,蒸着と同様に斜めに配向した膜を作製できることが判明した。この方法によれば,種々の材料・混合材料を成膜できる。いずれの実験でもシリコンの融点が比較的低いことに起因して,膜の充填率が高くなったため,偏光分離動作を確認するには至らなかった。充填率を下げて偏光分離特性を向上するには,基板温度を下げれば良いことが理論的に判明したため,次年度では基板を液体窒素温度まで下げて成膜する計画である。 一方,針状の斜め配向膜が成長する条件を理論的に調べた。その結果,基板を低温にし,蒸着粒子が基板表面上で横方向へ拡散しない状態にすれば斜めに配向し,かつ充填率の低い膜が作製できることが分かった。これにより,斜めに配向した針状シリコン膜の作製ガイドラインを得ることができた。
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