申請者は、半導体レーザの直接周波数変調特性を利用して「光波コヒーレンス関数」を合成する手法を発明し、さらにこのコヒーレンス関数が干渉計中の参照光の位相変調により掃引できることも見いだした。本基盤研究では、この原理を利用した分布型光センシング手法を提案し、研究を深めた。 まず、p-OCDR(phase-modulating Optical Coherence Domain Reflectometry by Synthesis of Coherence Function)法を提案した。従来のOCDR法ではコヒーレンス関数の合成および掃引をすべて半導体レーザの周波数変調で行っていたのに対して、本手法ではその掃引は位相変調により行うため、光源への負担を大幅に軽減でき高性能を実現できる。p-OCDRにおける種々の性能制限要因を検討して、その対策を考案し、空間分解能1.2mm、感度-100dBのリフレクトメトリ系の構築に成功した。さらに、p-OCDR法により、将来のFiber to The Home(FTTH)の実現に対応して、光ファイバネットワーク上約10km遠方の端末光デバイス周辺の反射光分布を、空間分解能数cmで測定することを目指した新しい光リフレクトメトリシステムを提案した。5km先での反射光分布を空間分解能6cmで測定することに成功した。続いて、p-OCDR法の原理を偏波維持光ファイバの偏波モード間結合に適用することにより、分布型光ファイバセンサを構成し、光ファイバへの圧力分布を測定するセンシングシステムを構成した。空間分解能9m、測定範囲約1kmを達成した。 これらシステムは、光の反射強度分布を測定するものである。これに対し、光ファイバ干渉計型センサが与える光波位相情報の取得に光波コヒーレンス関数の合成法を適用する研究も進めた。つまり、多点型光ファイバ干渉計型センサ各々の光位相出力を、本合成法により分離検出することに成功している。さらに、本合成法により、計算処理も機械的可動部分も不要な光トモグラフィ系を発明し、基礎実験系を構成して、その機能の確認にも成功している。 以上のように、本研究の目的を十分に達成したと考えている。
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